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激戦地サイパン・テニアンの今 米中対立の中で

 太平洋に浮かぶ米領の北マリアナ諸島サイパン島を軽飛行機で飛び立ってから約10分。テニアン島が眼下に広がった。

 島の北部に4本の茶色い線が見える。第2次世界大戦末期の1944~45年、米軍による日本爆撃の拠点になったノースフィールド飛行場だ。

 大戦後、長く使われてこなかった飛行場で今年1月、本格的な改修工事が始まった。

 そのねらいは中国だ。

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テニアン島のノースフィールド飛行場には整備用に使う車両が多数、駐車してあった=2024年8月18日、テニアン、牧野愛博撮影

 米空軍嘉手納基地(沖縄県)のホームページによれば、米空軍のケンドール長官らは4月4日、テニアン島で飛行場の改修工事を視察し、エドウィン・アルダン・テニアン市長らと会談。米空軍の新しい戦略「機敏な戦力展開(ACE)」の重要性を強調した。

 ACEとは、約2千発とされる中国軍の中距離ミサイルの脅威を分散するため、南太平洋などに米空軍の滑走路や拠点を増設し、戦力を分散・展開させる戦略のことだ。

 かつて日本爆撃の拠点だった島が、約80年の月日を経て、米国の対中戦略の拠点になろうとしている――。何が起きているのかを確かめるため、私は滑走路に向かった。

 米・北マリアナ諸島のサイパンとテニアンは戦前、日本領として栄えました。第2次世界大戦の日米激戦の末、原爆投下など日本本土爆撃の発進基地となった両島。あれから80年がたち、米中対立の波が押し寄せています。現地ルポを3回にわけて報告します。

 4本の滑走路の一つ、「A滑…

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